2004年08月01日

別冊「aada」2000.8.1号

☆2000年夏に催されていたメール企画を当時と同じ日程で再放送しています☆
back(7.25)

  "liner noise"

 夏祭りの前日、私はテルテル坊主を作っていた。
窓の外から聞えてくる雨音を気にしながら。
 はじめて作ったのは一年生の時の遠足。
以来、これを作ると次の日はたいがい雨にふられる。
今回も雨だったら、もう作ってやんない。

   『金魚』/ 第2話「彼女の第一歩」

 目を覚まし、2,3回ほど目をぱちくりさせる。
周りの様子に気がつき、パッと立ちあがってカーテンを開けた。
 まぶしい。
窓の外に吊るされたテルテル坊主さまに手を合わせ、感謝。
「どうかこの天気がお祭りまで続きますように…」
 久しぶりに早起きをしたので、公園に行き 3週間ぶりのラジオ体操に参加
した。帰り道、首にぶら下っているラジオ体操カードを何度も見かえしなが
ら歩いた。空欄がちょっと多いけど、そのおかげで今日の日付が目立って見
えることが嬉しかった。
 杉山神社のお祭りは夜7時からだというのに、お母さんに頼んで朝から浴衣
を着ていた。両親が買い物に出掛けたのを確認すると 私は鏡台の前に立ち、
雑誌を見ながら いろんなポーズを試していた。
(うなじに惹かれるって書いてあるけど、ココのどこがいいのかなぁ)
 ちょうど なやましいポーズに挑戦していた時、鏡越しに映っている弟の顔
に気がついた。…しまった、こいつの存在を忘れてた。
「姉ちゃん。マゴにも衣装っていうはこういう時に使うんだね」
ぷるぷるぷる。
「あれっ?ほめたつもりだったんだけど」
・・・・あ〜き〜ひ〜こ〜っ!
振り返ったとたん逃げる弟を追いかけ、追い詰め ボコボコにしてやった。
たぶん浴衣の裾が破れたのはこの時だと思う。

 いつのまにか夜の7時をまわっていた。今日の『サザエさん』はいつもより
笑って見ていた気がする。
「楽しいことが控えていると、とても幸せになるね」
何気なく家族に言ったら、弟が茶々を入れてきたので一発くらわせておいた。

 玄関の方から裕子ちゃんの声が聞こえた。彼女も今日は浴衣で決めてきた。
全体的に薄い黄色の生地にお花をあしらった浴衣は、裕ちゃんらしくてとて
も似合ってた。
 茶の間から出てきた弟があんまりにも裕ちゃんをほめるので、思わず左足
を踏んでいた。弟は私達と一緒に行くことを諦めたようで、中にひっこんで
いく。裕ちゃんはいつものように失笑していた。この光景を見るのにもだい
ぶ慣れたみたい。学校では決して見せないこの姿を知る数少ない友達がこの
裕ちゃん。小学校に入ってからずっと一緒のマブダチ。
 下駄箱から箱を取りだし、下駄の入った紙の包みを一年ぶりに広げていく。
「帰りはちょっと遅くなるかもしれないけど…、いってきまーす」
ガラガラガラ。玄関を開けたとたん、夜風がふわっと通り抜けた。
もう だいぶ涼しくなってきたね。

 神社までの道のりは裕ちゃんと二人でキョロキョロしながら歩いていった。
彼女も私も目的は同じだった。
 (アイツはきっと神社に来ている)
 私達二人はそれぞれ違う人を探していた。
裕ちゃんのお目当ては、クラスの中でも目立った存在で人気者のうっちゃん。
彼がサッカーをしている姿を影から見つめているファンは結構多い。けど、
うっちゃんと一番お似合いなのはやっぱり裕ちゃんだと思ってる。
 私はというと、うっちゃんの隣にいつもくっついている一見 パッとしない
男の子。裕ちゃんにこのことを打ち明けたら、好みがマニアックだと言われ
た。わかってない。確かに彼がサッカーをしている所を見ていても、あまり
うまいとは言えないけど、ボールを蹴っている時の表情は他の誰よりも一生
懸命で、ボールを追いかける後ろ姿は誰よりもがむしゃらに走っていくの。
 うっちゃんと裕子ちゃんはよく話をするような仲だった。それに彼と私が
加わり、4人組の輪になることは多いんだけど、彼は私と裕ちゃんに話かけて
くることはほとんどなかった。でも、うっちゃんと裕ちゃんと私で盛り上が
っている会話の間に、ときどきポソっと彼の言葉が入る時があるんだけど、
そのほとんどは寒いギャグなの、これが。それを聞き漏らすまいと、私はい
つも聞き耳を立ててた。
 そう、彼は私のツボだった。最初はただのファンだった。

 一学期の終業式の日に、裕ちゃんはうっちゃんからさり気なく 夏休みの予
定を聞きだしていた。うっちゃんは今年も神社のお祭りに行くみたい。もち
ろん彼も一緒。だと思う。

 そうこうしているうちに神社に到着。お祭りは今年も人で溢れていた。
普段はだーれもいない空き地が、今日はピカピカ華やいでいる。夏休みも
もうすぐ終わりっていうのをふっ飛ばしてくれるほど、神社は元気だった。
 二人してあんまりキョロキョロしているのも変なので、おとなしくヤキソ
バを食べることにした。でも、私達のこんな所を見られたくない。神社の境
内の方でカラオケ大会をやっていたので、おじちゃんおばちゃんの中にまぎ
れ込んで、私達はヤキソバとたこ焼きを交互に食べ合った。
 あ、そういえば家でゴハン食べてきたんだっけ。
お祭り恐い。

                  『金魚』/ 第2話 おわり


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ラベル:金魚
posted by ozy- at 23:44| Comment(0) | TrackBack(0) | ああだこうだ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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