2005年04月21日

別冊“のすたるじーちゃん”卒業記念号

#『nostalgy』という期間限定のページを作りました(1/17)
#ページ自体は2005年4月で終了しましたが、記事は
#こちらに移します。題して、別冊「aada」スペシャル。


5年前に書いた原作『nostalgy』を、あらためて
書いてみようと思って、作ったのがこのページでした。
“4月いっぱい”と期間を限定して始めたこのページも
公開終了まで残りあと10日です。
思い残すことのない終わり方をしようと思います。

2000年3月に書いた原作『nostalgy』は当時、
テープを送った方々にメールでお届けしました。
今夜はその時のメールをお披露目しようと思います。
今回あらためて書いたものと見比べると、よりいっそう
味わいが深まるかもしれません。それでは、どうぞ。



> Subject:“のすたるじーちゃん”卒業記念号
> Date:Tue, 28 Mar 2000 00:29:40

こんばんは。
今回のテープを送らせて頂いてから1週間が経とうとしています。
その中の感想で「よくわからない」というご指摘を頂きましたので
今回はその原作をお披露目することにします。
こちらを読んで、少しでも本作を楽しんで頂ければ幸いです。
長文のため、読む前に一度トイレなどを済ませてからお読み頂く
ことをオススメします。それでは、どうぞ。



『Nostalgy』  (c)liner note.



主な登場人物
彼女(テニス部)
 (野球部/球拾い専門の背番号16/
   彼はテニスコートにいる彼女のことがずっと気になっていた)
響子(彼女の友達/テニス部/ずっとテニスコートから彼を見ていた)
先輩(高校2年/テニス部で彼女達が中学1年の時にお世話になった先輩)


“舞台”
坂の小道が幾つも入りくんだ造船の街 広島県尾道。
小高い丘に登れば、この街はあっという間に一望できる。
海へと向かう船はゆっくりと泳いでいく。頬を伝う潮風も心地良い。
その丘の上に立つ中学校に通っているのが今回の主人公である。
 物語は主人公がこの学校に通った最後の1年間を描いてゆく。


冒頭

 彼はずっと見ていた
中学1年の時からずっと続けてきた野球部。彼はもうすぐ3年に
なろうとしている今でも外野で球拾いをしている。技量があるほう
では無かったが、人一倍 野球が好きだった。後輩からも冷やかされ
たりしてはいるが、本人は野球さえできればそれで楽しかった。
そんな彼も落ち込むことはある。毎日 監督からあれだけカミナリを
落とされていたら誰だってそうなる。そんな日も背番号16は外野で
球拾いをしていた。

彼の楽しみは野球だけではなかった。
グラウンドのすぐ横にあるテニスコートでは テニス部がいつも
練習していた。ふとした瞬間、その中にいるひとりの女の子を
見ている事が多くなっていた。テニスコートで一生懸命 ボールを
追いかける彼女を見ていると、もう少しだけ自分もがんばれた。
彼に勇気を与えてくれるその彼女の姿は、いつしか彼の中で
かけがえの無い存在になっていった。


 響子はずっとみつめていた

テニス部の練習はとてもキツイ。"エースをねらえ"に感動して入部
したのはいいけど、実際ホントにキツかった。無理やり読ませた
親友の彼女も一緒に入部してくれたけど、あヤツは私とちがって
いっつも楽しそうに走りまわっている。

去年卒業したあの先輩の影響が大きかったんだと思う。
先輩の残した言葉
「誰かのために勝つんじゃない!自分のためにやるんじゃい!」
だとか「気合でがんばる!」だとか、今では口グセのようにあの子も
言ってるし。でも、先輩と彼女の違うところは テニスの才能があるか
無いかって事かな。私の見るかぎり彼女は決してうまい方じゃない。
でも根性だけはある。それともただのアホなのかしら。
まぁどっちにしてもあの子がやる限り、私も負けてらんない。

そうそう、私にはテニスよりも大事なことがある。それは金網越しに
見る野球部の背番号16番。球ひろいばっかりやってて、最初はそのうち
すぐ辞めるのかなって思ってたけど、未だにやめてない。というより、
もうすぐ3年なのに未だに球ひろいって…。でもあの人、野球部の中で
一番 楽しそうにやってる。声も一番張りあげてるし。
今どきめずらしいひと。
彼とは中学に入った時からずっと同じクラスなの。
クラスじゃパッとしない存在なんだけど、背番号16の時はちょっと違う
顔をしてる。…あ、これ以上書くとラブレターになっちゃうから止める。
それにしても私のまわりって、どうしてこんなに変な人が多いのかしら。
…あのふたりって結構似た者同志よね。くやしいけど。


〜物語〜

1992年
 4月
彼女と彼は、晴れて3年生。
初めて同じクラスになる。しかも席はとなり同士。
“彼女”
ついに3年生だ!この制服を着るのもあと1年
いい1年間にしたい
いい恋もみつけよう!
“彼”
あこがれのあの娘と念願の同じクラス!
しかも、隣を振り向けば その彼女の横顔が!!うぉぉ!

チェリーブロッサム/松田聖子


 5月
“彼女”
文化祭委員に選ばれちゃったよ。大変そうだけど…でもまぁいっか。
今年で最後の文化祭だもんね。
となりの席の人?
あぁ、印象は "ちょっと変な人"
教科書忘れも激しいし、ちょっとした厄介(やっかい)者かな
“彼”
彼女と話そうとするが、キンチョーのため 自分でも何を言ってる
んだか分らなくなる。昨日は数学の教科書を忘れた事にしたから
…今日は和英辞書でいくか


 6月
今日は夕方から突然降ってきた。
“彼女”
「うわっ、雨降ってる!」
文化祭実行委員の初めての集会で遅くなる。
「家まで走るか」
“彼”
「あ…、雨か」
部室にある置きっぱなしの傘を借りて、帰りを急ぐ。

「あ…」
帰り道、横を通りすぎたのは 両手でカバンを頭の上にかぶせた
彼女だった。
「お お おい、ちょっと」
“彼女”
「へ?」
背後から突然かけられた言葉に振り向くと そこにはよく見た顔が。
“彼”
「何走ってんだよ。・・・これ、ハイ」
“彼女”
「・・・?」
“彼”
「…じゃぁ」

右手に持っていた傘を彼女に渡すと突如走り出す彼。
その場で立ち尽くす彼女。
一瞬の無音のあと、ふたたび雨の音が聴こえてきた。

あじさいのうた/原由子


 7月
あの日以来、ふたりの間で会話らしい会話は ほとんど無い。
傘は返せないまま、1学期期末テストが始まった。
“彼”
傘の一件を妙に避ける。
“彼女”
毎日傘は持ってきているが意識してしまい、
なかなか言い出せないでいる。


 1学期終業式
“彼”
ついに決心。
ごく自然に言おうと、前日から練習を積んできた成果が試される。
隣を振り向き、そして言葉をふりかざす。
「しばらくのお別れだぜ」
…笑われてしまった。
“彼女”
「ぷっ」
彼が妙に、かわいく思えた。
なんだか吹っ切れて、簡単に傘も返す事が出来た。
これでずっと引っ掛かっていた蟠(わだかま)りも取れた。
「さぁ来い、夏休み!」


 8月
“響子”
夕焼けの中、北門の自転車置き場で 彼が練習から帰ってくるのを
待っていた。夜になっても彼は学校から出てこない。グラウンドに
行ってみると、ひとり素振りをしている人影を見かけた。背番号16。
遠くからその背中を確認すると、おそるおそる近づいていった。
響子が声をかけると、その振り向いた真っ黒い顔は笑顔で迎えてくれた。
広い星空の下で、響子は彼に打ち明けた。
しばらくした後、グラウンドから出て来た響子は、無言のまま
北門の方へと歩いていった。人気(ひとけ)のない自転車置き場に戻り、
静かに自転車をこぎだした。
北門を出た瞬間、響子の目から涙があふれだしてきた。
涙は ぬぐわれることなく頬に伝わる風と共に消えていった。
グラウンドでは、背番号16が素振りをいつまでも続けていた。

スターダストメモリー/小泉今日子

 9月
2学期が始まる。
すぐ目の前に迫った文化祭に 実行委員の彼女は大忙し。
“彼女”
実行委員長の申し出で、彼のいる部に仕事を依頼する係りに
なってしまう。
“彼”
部活の恒例公務だが、今年の仕事相手は彼女だった。

公務とはいえ、ふたりは会うことが多くなる。
除々に会話は自然に交わせるようになっていった。


10月2日
文化祭。ふたりとも忙しくて ほとんど会えない。
お互いなかなか見つけることも出来ず、
後夜祭をむかえる事となった。

次々に打ち上がる花火。
それを横目で見ながら、自然とお互いの姿を探しているふたり。
ひとつひとつ花火がひらく時、生徒達の歓声が鳴り響く。
“彼女”「あっ」
 “彼”「あ」

やっと見つけた

“彼女”花火…、綺麗だね
 “彼”うん。…でも、ずっと歩いてたから あんまり見てなかった
“彼女”うん。あたしも

ようやく花火をゆっくりと見ることができた ふたり

“彼女”綺麗だね…
 “彼”…あの。オレ、部室からこっそり持ってきたんだ、これ
“彼女”あ!線香花火
 “彼”ここら辺、結構混んでるからさ、あそこの鉄棒の方に
    行ってみようよ
“彼女”うん

まだまだ盛り上がる打ち上げ花火

“彼”うまくつかないな

マッチがなかなか使えない

“彼女”ちょっと貸してみ。…ほら、ついた
 “彼”よっしゃ。引火!
“彼女”…わぁ、きれい。

まだまだ続く打ち上げ花火
その中で、下を向いているのは ふたりだけだった

“彼女”かわいいね
 “彼”うん。・・・オレ、こっちの方が好きだな

ふたりの間に交わす会話は少なかった。いや、必要なかった。
しばらくして、あまりにも普段と違う雰囲気が流れている事に
気づくふたり。急に照れくさくなり、口調はいつものものに
戻される。

最後の線香花火が赤くなった

“彼女”…アンタさぁ、好きな人とかいるの?
 “彼”…ば、ばかやろう。そんなのもん… いるわけねぇ
    じゃねえか…
“彼女”…。
 “彼”…オ、オマエはどうなんだよ
“彼女”アタシ?アタシは・・・
   女ってのはね、いつでも恋をしているものなのよ
 “彼”けっ
“彼女”アンタにはわかんないけどね。この乙女心は
 “彼”おとめ?どこどこ、どこにいるんだ。その乙女って
“彼女”あ
 “彼”なんだよ
“彼女”もう落ちてる
 “彼”あっ、ホントだ…

こうして、中学最後の文化祭は終わった。

 2学期中間テスト
ふたりは文化祭直後の中間テストも お互い協力し合って
勉強していた。

You're My Only Shinin' Star/中山美穂


12月
“彼女”
最近、彼が冷たくなった
私が楽しみにしているクリスマスの話をすると、
特にキゲンが悪くなる
…なぜ?
何か悪いこと言ったかな…
“彼”
「3学期は違う学校で」
親から突然東京に引っ越すことを告げられる。

何も無いままクリスマスが、そして 年が越えていく。

クリスマス・イブ


1993年
1月
高校受験まであと1ヶ月あまり。
お正月を過ぎても彼女の機嫌はすぐれなかった。
溢れんばかりの気持ちをおさえ、彼女は受験勉強に
専念していた。

1月7日
“トルルルトルルル、ガチャ”
「はい、もしもし」
あ、(彼女の名前)! わたし。
「あ、響子!」
あけましておめでとうございます。
「あ、ハイ。明けましておめでとうございます」
今年もよろしくお願いします。
「今年もよろしくお願いしマス」
年賀状、ありがとうね!
「うん!こちらこそ!」
…あの…さ
「えっ、何?」
新年早々なんだけどね。ちょっと話しておきたいことが
あってね。
「ん?うん、でどうしたの」
実はね
「うん」
(彼の名前)君
「…うん」

「彼がどうしたの?」
あのね
「うん」
…明日から学校じゃない
「うん、そうだね。明日は…(カレンダーを見る)1月8日、
 始業式だね」
それでね
「うん」
彼…、明日 来れないと思うの
「えっ?明日来れないって、なんで?」
うん。たぶん…、あしただけじゃなくって
「…明日だけじゃないって。それって、どういう…」
うん。あのね
「うん…」
彼が
「うん」
・・・引っ越しちゃったの
「えっ!?…ひっこした!?…」
去年の 年末にね
「去年の年末に…」
親の仕事の都合とかで、その…、東京に
「東京に!?…」
引っ越したんだって
「…え、それって誰から聞いたの」
あの… 今日、先生から
「…あ、そうか。響子、学級委員だったもんね…」
うん。…(彼女の名)?
「…え?」
だいじょうぶ?
「…うん、大丈夫。…じゃないかも」

…(彼の名)ってさ、昔から何でも急なんだよね
「そうだね…」
まわりの人の身にもなってみろっつうの
「そうだよね…」
まったく…
「うん…」
どうしようもないヤツだよ
「うん、どうしようもないやつ…」
(彼女の名)?
「うん…」
元気… だしてね
「うん、ありがと」
…じゃ、明日学校で
「うん。あしたね」
…じゃぁ、ね
「またね」
“…ガチャン”

道 /丹下桜

“彼”
東京に引っ越した今でも、親になんとかあの学校で卒業させて
ほしいと頼み続ける。


2月
彼女は地元の公立高校を、彼は東京の私立高校を受験。
響子も地元の私立高校を受験し、みんな それぞれの道を
歩み始める。

2月26日
響子と彼女は学校の屋上で寝そべっていた。
“彼女”
この前のバレンタインの時も確かおんなじことしてたかな。
…まぁ、そん時は受験も目の前だったし、あたしらには
そんなイベント関係ないのよ。…関係ない
“響子”
響子はずっと前から彼を見つめてきた。それは彼女が彼と
出会うずっと前から。
誰にも言わないでおこうと思った。もちろん 親友の彼女にも。
しかし、それは女同士。彼女もうすうすは気づいていた。
卒業間近のこの時期、響子は彼女に打ち明けた。寂しさに
ひとりたえている彼女の姿に、耐えられなくなってそうした
のかもしれない。
いや、そうじゃない。
彼女との中で隠し事があるのに違和感を感じるようになった
からだと思う。

「…わたしね、実は…、アイツと3年間おんなじクラスだったんだ
 …でね、その…、好き…、だったりしちゃってね
 …その、ずっと好きだったりしててね
 …、それで、去年の夏におもいきって、こくはくしたのね…
 で まぁ…、ふられちゃったわけなのよ。これが。
 うん、でも しょうがないじゃない
 …でもね、でも… まだね。ときどきね。
 ここんとこが、ちょっとだけ キュッとなるんだよね… 」

彼女は響子よりも先に泣いていた。

いつもそこに君がいた/レイジールーズ・ブギ−


3月9日卒業式前日
彼女と彼、そして響子のそれぞれの進路は決まっていた。
“彼女”
先輩に捧げる中学生活最後の手紙を書いていた。
書いているうちに、外に積もる雪のように
真っ白な心になっていくのを感じた。

冬の終わり/松任谷由実


“彼”
前の家の契約切れの日がちょうど卒業式の日と重なっていた為、
その日まで使ってもいいそうだ。ひそかに親も仕事の休みを
必死で頼みこんでいたようで、結局両親と共に卒業式の前日、
彼はこの街に一日だけ帰って来ることができた。
着いた頃には、もう街灯がついていた。
今年 はじめて見るひさしぶりの街並みは、
白い雪がまだ積もっていた。
家に向かう両親とは途中で別れた彼。
彼の向かっている先は、自分の家ではない。
まだ一度も中に入ったことのない場所。
何度も前を通っているのに、いつも見上げるだけだった家。

いつのまにか雪が降っていた

彼はありったけの勇気を 人差し指に集めた。

3月9日 卒業式前夜

ピーンポーン
“彼女”
「はーい」
誰かな、こんな夜遅く

ちょうど先輩への手紙を書き終えたところだった。
家族は皆、出掛けていた。
そのままコートを羽織り、階段を降りる。
玄関のドアノブを少しずつ押していく。

さぶいよ〜
「どちらさま…です… か・・・」

門の所にいたのは 彼女を喜ばそうとする彼の笑顔。
玄関から門の方へ歩いてくる彼女。

ふたりの再会

そのまま、うつむいたままの彼女。
ゆっくりと顔を上げる彼女。
その目を見つけた彼。

ふたりはみつめあう

照れる彼。
再びうつむく彼女。
流れ落ちる彼女の涙。
白い雪におちていく涙の雫。

ゆっくりと流れる時間
遠くの方で 列車の音が聴こえていた

ふたたび顔を上げる彼女。
自然と笑顔になる彼。
その顔におもいっきり近づく彼女の平手。

音は雪の中に響いていく

頬の赤くはれた彼。
熱くなった彼女の手。

「アンタなんか だいっきらい!!」

抱きつく彼女。
羽織っていたコートが雪におちる。
声をあげて泣きだす彼女。
その彼女をつつみこむ彼の両手。
自然と笑顔になる彼。

「 ただいま 」


明日は卒業式
そして また別れる日
3月10日『仰げば尊し』


  (おしまい)

2000年3月25日
『ここにいるよ / 岩男潤子』


 *この物語はフィクションです*

   『Nostalgy』 (c)liner note.


> Subject:“のすたるじーちゃん”卒業記念号
> Date:Tue, 28 Mar 2000 00:29:40


ラベル:Nostalgy
posted by ozy- at 00:53| Comment(0) | TrackBack(0) | ああだこうだ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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