2005年03月23日

nostalgy「冬の終り」

先輩へ
ついに明日は、卒業式です。
この学校で過ごすのも、あと1日になりました。
響子や、美奈子、なっちゃんに、みさきと
同じ学校で会うのも、もう最後です。
今年は年明けの頃から私はずっとふさぎがちで、
学校もあまり好きじゃなくなっていました。
でも、卒業式が近づいていくに連れて、
学校がなんだか愛おしく感じてくるから不思議です。
教室のあのいつもの雰囲気。校庭の花壇。
テニスコート。下駄箱。もちろんクラスメイト。
そして文化祭実行委員の時、通った生徒会室。
彼のいた部室。
みんな眩しく思えてくるんですよ。
そんなに楽しいことばかりじゃなかったのに、
何だかみんな光って見えます。
先輩、これが卒業なんですね。

         卒業式前日 後輩より
追伸。
もうすぐ春が来ます



駅を降りた頃には、もう街灯がついていた。
今年になって初めて見る、少しだけ懐かしい街の景色。
白い雪がまだ積もっていた。
今夜は駅前の小さなホテルに両親と泊まることになっている。
ホテルに荷物を置くと、彼は再び街に出た。
向かう先は前に住んでいた自分の家ではない。
学校へ行くには少し遠回りになる商店街。
店の前で、彼はしばらく立っていた。
見上げると、窓に掛かったカーテンの奥から
ほのかな灯りがこぼれていた。

彼は店の裏へとゆっくり回った。
玄関から少し離れた門の前で立ち止まる。
郵便受けの隣にある白くて小さなボタン。
彼はありったけの勇気を人差し指に集めた。

『3月9日卒業式前日』

“ピーンポーン”
「はーい」
誰かな、こんな夜遅く。

彼女はちょうど先輩への手紙を書き終えたところだった。
家族は皆、出掛けていた。
そのままコートを羽織り、階段を降りる。
玄関のドアノブを少しずつ押していく。

さぶいよ〜。
「どちらさま…です… か・・・」

門の前で彼がたたずんでいた。
彼女を喜ばそうとする彼の笑顔。
サンダルのまま、門の方へと歩み寄る彼女。

ふたりの再会。

うつむく彼女。
彼がここまで歩いてきた足跡をぼんやり眺めていた。
黙ったままの彼。
彼女はゆっくりと顔を上げる。
その瞳を見つけた彼。

しばらく見つめ合うふたり。

照れる彼。
再びうつむく彼女。
流れ落ちる涙の雫。

ゆっくりと流れる時間。
遠くから 列車の音が聴こえていた。

彼女は少しづつ顔を上げる。
自然と笑顔になる彼。
その顔におもいっきり近づく彼女の平手。

音は雪の中に響いていく。

頬の赤くはれた彼。
熱くなった彼女の手。

「アンタなんか、だいっきらい!!」

抱きつく彼女。
羽織っていたコートが雪に落ちる。
声をあげて泣きだす彼女。
彼女をつつみこむ彼の両手。
自然と笑顔になる彼。

「 ただいま 」

「 …バカ 」


明日は卒業式。
そして また別れる日。



『nostalgy』
のすたるじーチャンネル・Liner note

back(3.16)/ next(3/26)



ラベル:Nostalgy
posted by ozy- at 23:46| Comment(0) | TrackBack(0) | ああだこうだ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック