2005年03月09日

nostalgy「道」

『1月』
高校受験まであと一ヶ月余り。
お正月を過ぎても夕紀の機嫌はすぐれなかった。
溢れる気持ちをおさえ、彼女は受験勉強に専念していた。

『1月7日』
“トルルルトルルル、ガチャ”
はい、もしもし。
「あ、夕紀! わたし」
あ、響子!
「明けましておめでとうございマス」
あ、ハイ。明けましておめでとうございマス。
「今年もよろしくお願いします」
今年もよろしくお願いします。
「年賀状、ありがとうね!」
うん! こちらこそ!
「…あの…さ」
え、何?
「新年早々なんだけどね。ちょっと話しておきたいことがあって」
ん? うん、でどうしたの?
「実はね」
うん。
「浩くん」
…うん。
「…」
彼がどうしたの?
「あのね」
うん。
「…明日から学校じゃない?」
うん、そうだね。明日は…1月8日、始業式だね。
「それでね」
うん。
「浩くん…、明日 来れないと思うの」
えっ? 明日来れないって、なんで?
「うん。たぶん…、明日だけじゃなくって」
…明日だけじゃないって。それって、どういう…。
「うん。あのね」
うん…。
「彼が」
うん。
「・・・引っ越しちゃったの」
えっ!? …ひっこした!?…
「去年の、年末にね」
去年の年末に…
「親の仕事の都合とかで、その…、東京に」
東京に!?…
「引っ越したんだって」
…え、それって誰から聞いたの?
「あの… 今日、先生から」
…あ、そうか。響子、学級委員だったもんね…
「うん。…夕紀?」
…え?
「だいじょうぶ?」
…うん、大丈夫。…じゃないかも。
「…。浩くんってさ、昔から何でも急なんだよね」
そうだね…。
「周りの人の身にもなってみろっつうの!」
そうだよね…。
「まったく…」
うん…
「どうしようもないヤツだよ」
うん、どうしようもないやつ…」
「夕紀?」
うん…
「元気… だしてね」
うん、ありがと。
「…じゃ、明日学校で」
うん。あしたね。
「…じゃぁ、ね」
またね

“…ガチャン”



Dear 浩さま
アホー。ドジー。のー天気ー。
急にいなくなるなバカー。
他の子の足ばっか見てんじゃねー。
このドスケベー。どっかいっちまえー。

はースッキリした。
浩くん、お久しぶりです。お元気ですか?
東京の受験は大変そうですね。
こっちは浩くんが何も言わずにいなくなってからというもの、
よりいっそう勉強に身が入るようになりました。
集中できてますよ。
…うー、また怒りがふつふつとこみ上げてきますが、
お身体にはお気を付けて。
響子も心配してましたから。
私はぜんっぜん心配してないけど。
いちおう、受験のお守りも一緒に送りました。
私も気合いでがんばってます。浩も気合いで乗り切れ!
絶対合格しろ!
                 1月15日
遠い空からあなたに向かってエールを送る夕紀より

『2月』
夕紀は地元の私立高校、響子は地元の公立高校を受験。
浩は東京の私立高校を受験する。
それぞれの道を歩み始めた三人。

浩がいなくなった後も、夕紀のほおづえをする癖はなかなか
なおらなかった。



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ラベル:Nostalgy
posted by ozy- at 22:20| Comment(0) | TrackBack(0) | ああだこうだ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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