2005年02月16日

nostalgy「The Stardust Memory」

暑中お見舞い申し上げます。
長かった期末テストもよーーやく終わり、やっと来ました夏休み!!
宿題も出てはいるのですが…、まぁ、あと1ヶ月は置いといて。
まずは遊んでおかなければ!
先輩とも久々にお話したいです!
8月中、お暇な日があればご連絡下さい。
中学最後の夏だー!!
                    7月28日 遊び人より

追伸。
今日は何ていっても、ひさびさに街で彼を見かけたこと。
いつも制服姿しか見たことなかったから、ちょっとドキドキしたぞー!!



『一学期終業式』
浩はついに決心する。
ごく自然に言おうと、3日前から練習を積んできた成果が試される。
右隣を振り向き、そして言葉を振りかざした。
「しばらくのお別れだぜ」
笑われた。

浩が妙に、かわいく思えた。
なんだか吹っきれて、借りていた傘も簡単に返すことができた。
「これ、ありがとう」
「ああ、ええと。何だっけ?」
浩は嘘が下手だった。
「ねぇ、ここ折れてたよ」
「ああ、これね。ちょっとコツがあってさ」
バッと傘を広げると一本だけ力なく垂れ下がった。
浩はていねいに骨接ぎ手術を施すと、折れ曲がっていた関節は
ピンと跳ね上がった。
「浩くん、やるぅ」
「それ程でも」
「あと、ちょっと破れてたよ」
「そうだっけ」
「直しといたから」
「もしかして、このバンソーコーが貼ってある所?」
「そう」
「キティーちゃんの」
「かわいいでしょ?」
「ちょっと目立たないか? 黒い傘にピンクのキティーちゃんは」
「うん、でも、うちにあるバンドエイドはみんなハローキティだから」
「そうなんだ」

「アンタらいい加減にしろ!」
心の叫びがいつの間にか声に出ていた響子だった。

さぁ来い、夏休み!


『8月』
夕焼けの中、西門の自転車置き場でひとり響子は待っていた。
野球部員が続々と現れる中、キョロキョロ見回しては溜め息をこぼす。
「響子〜!」
振り向くとそこには見慣れた顔が。パン屋の娘だ。
「ちょうどいいところに響子さん」
嫌な予感がする。
「あのさ、自転車のタイヤ、パンクしちゃって困ってたんだよ」
「はいはい」
夕紀の自転車を引きながら二人は校門近くにある用務員室に向かった。
「おじさん、またパンクしちゃった」
「おっ、自転車屋の響子ちゃん。また修理かい?」
「うん、悪いんだけどまたバケツと水借りるよ」
響子はタイヤの内側に入っているチューブをめくり取ると、
水の入ったバケツの中でパンクした箇所をブクブク探し出した。
夕紀と用務員のおじさんは響子の手馴れた作業を食い入るように見つめる。
「あった、ここ。おじさんゴム貸して」
「あいよ」
用務員室には自転車パンク修理用の道具が一通り置いてある。しかし
それらを自ら使いこなし、修理する生徒はおじさんの用務員生活
27年間で二人しかいない。一人は響子の父親。商店街の自転車屋で
いまだにパンク修理をしている。二人目がその娘だった。
響子の作業風景を見つめるおじさんの顔は自然と笑顔になっていた。
「はい、出来上がり」
「ありがとう! 私は良い友達をもって幸せだよ」
「いいから。わかってるから」
傍らでおじさんはコクコクうなずいていた。
「これでお父さんも安心だ。響子ちゃんはもういつでもお店を継げるな」
「うんうん」
夕紀もつられてコクコク。嬉しそう。
「あとはおムコさんだな」
「はいはい」
おじさんの決まり文句を響子が軽くあしらったところで、
修理道具も片づいていた。
二人はおじさんに一礼して、校門へと向かった。
「あ、夕紀ごめん、忘れ物。先に帰って」
校門で夕紀を見送った後、響子は再び自転車置き場に戻った。

星空が辺りを照らしはじめても、彼は現れなかった。
よしと気合を入れてグラウンドに向かう響子。
何も見えない。照明も落とされていて、人の気配もなかった。
グラウンドの奥にある部室棟に向かう。胸が苦しくなる。
部室の中で一つだけ明かりがついていた。野球部の部室。
窓からこぼれる明かりに照らされた、人影がひとつ。
素振りをしていた。
目をこらせると、見慣れた背番号16の文字が浮かび上がってきた。
響子はそっと近づいて「わっ」と声を掛けた。
驚いて振り向いたその真っ黒い顔はゆっくりと笑顔にかわった。

広い星空の下、響子は浩に打ち明けた。

グラウンドから出て来た響子は、星を眺めながら
西門の方へと歩いていった。
背番号16のスイングの音はいつまでも星空に鳴り響いていた。

薄暗い自転車置き場に戻り、静かに自転車をこぎだす。
西門を出た瞬間、我慢できずに泣いた。
拭われることなく頬に伝わる涙は風と共に消えていった。
過ぎ去ろうとする夏の海風は、まだ少しだけ温かかった。




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ラベル:Nostalgy
posted by ozy- at 22:31| Comment(0) | TrackBack(0) | ああだこうだ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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