印象的だったのが、武道館を目指そうとした時のエピソード。
彼女は椎名林檎さんの武道館ライブを目にして、
3年後に自分もここで歌いたいと誓いました。
まだレコード契約もない時期に。
3年後の2006年12月、彼女はその夢を実現させました。
日本武道館。しかも史上初、たったひとり弾き語りライブ。

「武道館に桜が咲いた日
〜アンジェラ・アキ ライブ&ドキュメント」
ひとつの番組が生まれました。
ナレーションを担当したのは椎名林檎さん。
アンジェラ・アキさんはこの番組をどのような気持ちで
見ていたのでしょうか。
少なくとも、私にとって忘れることのない番組になりました。
彼女が武道館で着ていた黒いTシャツの両肩に刻まれていた
“29”の文字通り、私も29歳。今年、30になります。
私達は就職氷河期ど真ん中をさまよい、
社会から何度も弾かれた世代です。
私達は学びました。
自分を信じて突き進むこと。
そして、今まで過ごした時間を大切にすること。
前だけを見てがむしゃらに突き進むのではなく、
これまで歩んできた道もしっかりと見つめ、
今を刻み、これからの糧として築き上げていく。
今までの積み重ねが自分自身であり、未来になる。
サクラ色の時代を私達は決して忘れません。
2006年12月31日 NHKホール。
彼女は紅白歌合戦で自分の原点でもある
ふるさとをつづった「HOME」を歌いました。
ナレーション・椎名林檎
“お父さんは今までで一番いい「HOME」だったとほめてくれました。
ハワイにいるお母さんにも、お父さんは受話器をテレビにあてて、
アンジェラの歌を聴かせていました”
歌い終わった直後、父に電話をするアンジェラ
「ほんまに? お母さんもほな、リアルタイムで聴いてくれたんじゃ」
アンジェラに負けないくらい、
私もメガネいっぱいの涙を流していました。
真っ赤なTシャツの両肩に刻まれた“29”の文字が
眩しいくらいに光輝いていました。