2005年02月09日

nostalgy「あじさいのうた」

こんばんは、先輩。
6月に入ってからずっと雨が続いていますが、
お風邪などはひいていませんか?
私は雨ってそんなに嫌いじゃないです。
こうして部屋の中に響いてくる雨の音を聴いていると、
なんだかロマンチックな気分になってくるから不思議です。
…まぁ、そんなことは置いといて。
私、文化祭実行委員に選ばれちゃいました!
いやー、最初はどうしようかと思ったんですけれども、
まぁ最後の文化祭だし、気合でがんばりたいと思ってます。
今年の文化祭は10月1日と2日に行ないますので、
先輩もぜひいらして下さいね。
                  6月17日 後夜祭楽しみな後輩より

追伸。
最近、気になる人ができました。
最初はちょっと変なヤツだなーって思っていたんですけど、
けっこう優しいかもしれない。
先輩。男の子って女の子になら誰にでも、いいとこ見せようって
思ったりするものなんでしょうかね?



『6月』
夕方から雨が降り出していた。

「うわっ、どうしよう」
夕紀は文化祭実行委員の初めての集会で遅くなっていた。
「家まで走るか」

浩は部室に置き捨ててあった黒い折り畳み傘を差していた。
歩く速度が遅いせいか、普通に歩いている生徒に追い越されていた。
突然、電車が横を通過したような感覚に襲われた。
「あ…」
頭の上にカバンをかぶせて全力疾走する夕紀だった。
「おーい」
「へ?」
背後から声を掛けられ、振り返る夕紀。
「あ」
そこにはよく見た顔がいた。

「何走ってんだよ」
「文化祭の集まりで遅れちゃって」
「そっかぁ…」
「そう」
「傘は?」
「持ってきてない。ねぇ、もう行っていい?」
「お、おう」
「じゃあ」
夕紀が走り出そうとした瞬間だった。
「なぁ」
「何よ」
「…これ、ハイ」
浩は握り締めていた傘を夕紀の前に差し出す。
「・・・いいよ」
「俺、家近いから」
夕紀に傘を手渡し、走り出す浩。
「俺! 家、近いから!」

止まっていた雨音が再び聞こえ始めた。
夕紀はしばらくその場に立ち尽くしていた。

「アイツ、走っても遅いな」


浩と三年間同じクラスの響子に彼の住所を聞いてみた。
夕紀や響子の住んでいる商店街よりもずっと遠かった。


『7月』
あの日以来、夕紀のことを避けてしまう浩。
夕紀も妙に意識してしまい、借りた傘のことをなかなか言い出せずにいた。
浩は忘れ物をしなくなり、ふたりの間で交わされていた数少ない会話も
ほとんどゼロになっていた。
教室の後ろにある夕紀のロッカーの中には折り畳み傘が入ったまま、
一学期の期末テストが始まった。



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ラベル:Nostalgy
posted by ozy- at 22:56| Comment(0) | TrackBack(0) | ああだこうだ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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