2005年02月02日

nostalgy「チェリーブラッサム」

先輩
お久しぶりです。お元気ですか?
先輩が頑張っていることは響子からも聞いています。
この春、私もついに中学3年生になりました!
クラス替えはもうドキドキでしたが、響子ともやっと同じクラスになれました!
この1年間がいい年になる気がしてなりません。
…そして今年こそはいい恋を見つけたいなと、ひとりほくそえんでいます。
それでは、また手紙書きますね。
先輩もいい人が見つけられることを祈って。

                  4月7日 先輩思いの後輩より


夕紀と浩は初めて同じクラスになる。しかも座席はとなり同士。
左を振り向けば彼の横顔。そんな浩はいつも無表情だった。
窓に広がる青い空と遠くに見える遊覧船を眺めていたいのに、
気付くと手前にいる浩の無表情がこちらを向いている。
夕紀は左ほほにあるホクロを見られているような気がして、
いつしかほおづえをする癖がついていた。

『5月』
クラス委員になっていた響子の推薦で夕紀は文化祭実行委員の候補に
あげられる。あまり乗り気ではない夕紀だったが、家の手伝いでやって
いるパン屋の売り子のイメージを前面に押し出した響子の熱弁はクラス
を動かした。投票の結果、得票数トップで夕紀は当選。
「中学最後だし」という響子の甘い言葉に丸め込まれる夕紀だった。
浩はというと、投票用紙に夕紀の名前を書き込めるだけで ときめいていた。

コンスタントに忘れ物を繰り返す浩。
「またぁ?」と嫌がる夕紀の顔がまた愛しかった。
「しょうがないなぁ」のひと言が出たら最後、浩の頭の中を
覚えたてのビバルディ「春」が永遠に流れた。
教室の片隅で机をくっつけて、ひとつの教科書をふたりで見る。
何事にもかえがたい神聖な時間だ。
終始、無口ではあったが。
授業中も休み時間も夕紀と交わす会話は数える程だったが、
自分の投げかけた言葉に反応してくれることが嬉しかった。
ひと言ふた言で幸せになれた。

響子はそれとなく隣に座っている浩の印象を夕紀に尋ねたことがある。
「何だろう、変な人」
教科書忘れも激しいし、表情無くて何考えてるかわからないし、
ちょっとした厄介者かな。とのこと。
少しほっとする響子だった。


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ラベル:Nostalgy
posted by ozy- at 00:07| Comment(2) | TrackBack(0) | ああだこうだ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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